昨日も 今日も そして おそらく明日も
セミが必死にないている──。
生きていることの 精一杯の主張は
それがどんな生物であっても 胸に迫るものがあるなぁと感じながら
ローザ・ルクセンブルクが獄中で書いた手紙の一説を思い返しています
ゲーテとシリレルを愛読していたユダヤ人の彼女は
目に見えるもの、耳で聞くことができるものだけではなく
物事の本質に深く想いをめぐらせた聡明な女性で
やがてブルジョア階級の支配からプロレタリア大衆の解放を求めて
その生涯を革命に投じてゆくのですが
弾圧され、投獄され、その獄中でこんな手紙を綴っています
鳥の歌声がいつも同じ調子にしか聞こえてこないというのは、
無頓着な人間の粗雑な耳だけのことです
最期は無残に殺されてしまったローザだけれど
鳥の歌声も虫の羽音も 彼女の耳には無限の響きを奏でていたのでしょう
必死にないていたセミが ポトリと目の前に落ちてきて
私は目を閉じて、耳を欹ててみた、そんな昼下がり。